【采配之妙7】岡田流②「孵化」に導く手腕を学ぶ
鳥谷敬内野手。東京六大学のスターとしておおいに騒がれて入団したスター野手です。藤本選手を押しのけて出場した一年目。.251、3HR、17打点の成績は正直やや物足りなさを感じるものでした。
二年目を迎えた鳥谷選手に岡田監督が用意したのは「二番・ショート」。あの松井選手ですら「できれば二番だけはちょっと…」と避けたがった、スラッガーとしてはあまりに不似合いな打順でした。
私も最初は意外に思いましたが、前回学んだように岡田監督の追い求める理想は攻撃野球。以前の交流戦中には「一番・スペンサー」や「二番・桧山」などの超 攻撃的布陣も披露済みです。ですから、鳥谷・二番もそのねらいの延長上のひとつの形と考えればあり得る話だと考え直し、一人納得していました。
ところが、「二番・鳥谷」にはそれ以上の岡田監督の思惑が込められている、と氏は言います。大事なキーとなるのは、彼の前を打つ「一番・赤星」の存在だというのです。
赤星選手を塁に出したバッテリーは当然盗塁を警戒します。その影響は配球面にあらわれ、必然的に直球が多くなるということは我々ファンでも想像がつきます。では、「多くなる」といいますが、実際どの程度直球の割合が増えるものなのでしょうか。昨年のデータがあります。
<打者鳥谷、走者なし> 直球47%、スライダー20%、フォーク12%
<打者鳥谷、一走赤星> 直球63%、スライダー12%、フォーク11%
実に16%も直球の割合は増加しています。これだけ直球を予想しやすい状況を利用して、バントやエンドランといった戦術の成功率をあげていくことができることも知っています。
岡田監督は、それとはひと味違った形でこの状況を利用しました。チームの将来を背負ってほしい一人の逸材に、よりのびのびとバッティングできる打順として二番を与えたのです。大半が直球という場面で思い切り振ってこい、そして早くプロに慣れろという親心とでもいったらよいのでしょうか。
鳥谷選手もこれに応え、二年目は.278、9HR、52打点まで成績を伸ばしました。細かく見ると、直球に対する打率と、前年ゼロだった左投手の投球を右方向にファールした数が大幅に上昇していたといいます。いかに思い切りよく振れていたかを物語る数値です。
「直球が多い」場面を戦術面とともに、一人の若手を最も輝かせる場として活用する。ここにも藤川・今岡選手らを飛躍させた岡田監督の選手観察の確かさを感じます。今季は「二番・濱中」という打順も見られました。赤星選手の次に置かれる打者に注目することで、岡田監督が期待している選手がうかびあがってくるかもしれませんね。
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